この動画は、Paidy(ペイディ)副社長・橋本知周さんが、キャリアの大きな転機となった楽天時代を振り返る回です。 軸になるのは、三木谷浩史社長と毎朝15分、約1年半続けたミーティングの経験です。 見ると、トップの決断の速さがどう生まれ、間近で何を学べるのかが、具体的に伝わってきます。
楽天で最も生きた、二つの判断の使い分け
橋本さんには、対照的な二つの動き方があります。 後で挽回できる失敗なら、エイヤーで飛び込み、トライアンドエラーをどんどん重ねていく。
一方で、絶対に失敗できないことに対しては、人が変わったように慎重になります。 世の中で自分が一番詳しくなるまで調べなければ、スタートすら切れないのだといいます。
このプレースタイルが最も生きた場所が、楽天でした。 日々求められるものが大きく、エイヤーで回すものと、絶対に間違えられないものが常に混在していたからです。
その二つを、どれだけの速さでさばいていくか。 野球を続けながら自分で起業もしてきた中で培った思考が、そのまま武器になったと橋本さんは振り返ります。
楽天を選んだこと自体は、結果論だといいます。 当時からインターネット業界で大きな存在だった楽天なら、まだ自分が知らない何かを学べるはずだ——その期待だけを頼りに、飛び込んだのです。
EC業界のスピードと、365日回し続けるサイクル
入って最も学んだのは、EC業界特有のスピード感でした。 新しいサービスも商品も次々に生まれ、一瞬でも足を止めれば、そのぶん機会を失ってしまう世界です。
だから、一つひとつの判断に時間はかけられません。 かといって、すべて失敗していいわけでもない、と橋本さんは補います。
失敗したときは、なぜうまくいかなかったのかを必ず検証する。 そのうえで、作り直してもう一度挑むのか、うまくいったものはそのまま広げるのかを決めていく。
この検証と再挑戦のサイクルを、365日、めちゃくちゃ速く回し続ける。 それが楽天という会社であり、そこで身についた感覚は非常に大きかったと語ります。
想像と違った点はあったか、という問いには、こう答えます。 ほとんどが、想像していたよりもすごいことばかりだった、と。
「手ぶらで来て」に、資料10枚
楽天での一番大きな出来事は、少し意外なきっかけから始まりました。 当時、楽天が始めた野球チームの成績が振るわず、三木谷社長が「野球に詳しい人から話を聞きたい」とランチ会を開いたのです。
アメリカでプレーした経験を持つ橋本さんも、この会に招かれます。 案内には「手ぶらで来てください」とありましたが、橋本さんはこれは絶対に手ぶらではないだろうと考えました。
そこで、楽天で学んだビジネスの知見と、アメリカで培った野球への理解を掛け合わせ、10枚ほどの資料を作り込んで持参します。 他の参加者が野球談義に花を咲かせる中、ビジネス提案を持ち込んだのは橋本さんだけでした。
その場では、特に返事はありませんでした。 ところが1週間ほど経った年末、三木谷社長から直接呼ばれ、「来年から仙台へ行ってほしい」と告げられます。
野球団への配属だと思い込んでいた橋本さんは、少し戸惑いながらも受け止めます。 しかし年が明けると、その思いは意外な方向へと動き出しました。
三木谷社長と毎朝15分、Koboで得た最大の学び
年明け、当時の副社長から告げられたのは、野球団ではありませんでした。 「Koboという会社があって、三木谷がお前にやらせると言っている」——電子書籍事業の立ち上げでした。
もともと橋本さんは楽天トラベルに在籍していました。 そこへ、楽天が買収したカナダのKobo社を使い、日本にまだ存在しない電子書籍市場を一から立ち上げる役目が回ってきたのです。
これは楽天にとってもかなり大きな投資で、三木谷社長直属の肝煎り事業でした。 前例のない挑戦であり、日々、新しい課題が次々に生まれてきます。
その進捗を、毎朝15分、三木谷社長に直接報告する——それが約1年半続きました。 日本のIT業界を切り拓いてきた人物と、毎朝向き合う時間です。
橋本さんが最も驚いたのは、その判断と決断の速さでした。 15分という短い会話は、聞き流せばそのまま終わってしまう。けれど三木谷社長は、その一つひとつの言葉を丁寧に拾っていったといいます。
拾った言葉に対して、ビジネスとして間違いがないかを自分の中で組み上げ、的確な指示へと変えていく。 その姿を間近で見られたことが、楽天で得た最も大きな学びだったと橋本さんは振り返ります。野球時代や起業を描いた回とあわせて見ると、一人の越境キャリアがどう地続きにつながっているかが、いっそう鮮明に見えてきます。
※本記事は、2026年7月3日公開時点の動画内容をもとに構成しています。
※社名・肩書き・当時の事業環境は、収録時点の本人の語りに基づく表現です。
※本記事は、特定の投資・起業・働き方を推奨するものではありません。