この動画は、日米が足並みをそろえて実施した協調介入を、実務の目線で読み解く内容です。同じ「介入」でも、4月・5月のときと今回では前提が大きく違います。見ると、目先の値動きだけでなく、いまの円の水準そのものが問われはじめたことがわかります。

今回の介入は、4月・5月と何が違ったのか

山﨑達雄氏はまず、春の介入と今回を切り分けます。4月・5月の介入では一時的に円高へ振れたものの、その後さらに円安が進み、160円台まで水準が切り下がりました。

理由は、円安の根っこにある条件が変わっていなかったからです。原油価格の上昇による貿易収支の悪化、日銀の利上げが後手に回るという見方、そして財政拡張への警戒。介入だけでは流れを変えられない局面だったと山﨑氏は振り返ります。

今回は、その3つがいずれも円高方向へ変わりはじめたタイミングでした。前日のFOMCでアメリカの利上げ観測が後退し、日本側は6月に利上げを実施済み。木曜の単独介入に続いて、金曜に協調介入が入ります。

つまり今回の介入は、流れに逆らう介入ではなく、向きが変わる局面を後押しする介入でした。同じ手段でも、置かれた条件で効き方はまったく変わります。

アメリカは、ドルではなくユーロで円を買った

山﨑氏にとって最大の驚きは、アメリカが協調介入に加わったこと自体だったといいます。通常、アメリカが協調介入をすればドルを売って円を買う形になります。

ところがアメリカは、自国通貨を売る介入を新興国などに対して長く批判してきました。そこで今回選ばれたのが、ユーロで円を買うという形です。自国通貨売りという批判をかわしつつ、ユーロ円は市場の規模が小さいぶん、少ない金額でも値動きへの影響が出やすくなります。

さらに異例だったのが、ベッセント財務長官の発信内容です。円が著しく過小評価されているとしたうえで、今回の介入は水準の是正であると述べました。当局は通常、相場の水準そのものは論じず「過度な変動への対応」と説明します。その一線を越えた発言でした。

背景として山﨑氏が挙げるのが、7月30日に公表されたIMFの外部セクター報告書です。2025年の円は均衡水準より7.2%過小評価されており、その後も円安が進んだことを踏まえると、山﨑氏は現在の水準を2割程度の円安と見ています。

もう一つの伏線が、介入前に日本の財務省が英語で公表したFIMAレポの活用です。FIMAレポとは、保有する米国債を担保にドルを短期で借りられる仕組みのこと。これを示すことで、大規模な介入が米国債の売却につながるという憶測を抑えつつ、介入資金は尽きないというメッセージにもなります。

これからの円相場は、何で決まるのか

今後の焦点として山﨑氏が挙げるのは、まず日銀です。上田総裁は7月の会見で、後手に回らない、必要ならペースを上げるという趣旨を語っていました。

そこにベッセント財務長官が、日本の金融政策を強く支持すると明言しました。利上げの織り込みが進めば、日米の金利差は縮まる方向に見られやすくなります。

もう一つが高市政権の財政です。「責任ある積極財政」の実際を見ると、補正では赤字国債の発行額を抑え、来年度予算では基礎的財政収支の黒字化も視野に入っています。ただし食品の消費税をゼロにする案は、財源が積立金などの一時的な取り崩しに頼る面があり、数年後に負担の問題が残ると山﨑氏は指摘します。

最後に投資家へのアドバイスも語られます。協調介入でも効果が完全に続いた例はなく、再び介入前の水準に戻る可能性もある。為替は長く持てば報われる世界ではない——だからこそ、余裕のある資金で、世界の動きを学ぶ道具として向き合ってほしいという締めくくりです。

動画で全体を見る

介入の舞台裏と、これからの円相場の見方を44分にわたって語っています。数字の背景まで知りたい方は、YouTube本編でご覧ください。

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※ 本記事は、2026年8月時点の公開情報と動画内容をもとに構成しています。為替、金融政策、財政をめぐる状況はその後変化する可能性があります。動画内の数値や見通しは収録時点での山﨑達雄氏の見解であり、本記事は特定の金融商品の推奨や投資助言を目的とするものではありません。