採用面接は、多くの会社で最も重要な選考の場です。それにもかかわらず、何を聞くかは面接官に任されていることが少なくありません。経験のある面接官ほど、自分なりの聞き方を持っています。
けれども、面接官ごとに質問が違えば、候補者どうしを同じ物差しで比べることができません。本記事では、面接の「構造化」を扱った研究を紹介し、面接官の側から質問と評価を設計する方法を整理します。
面接の受け方、つまり候補者側の準備は転職面接で実績を「盛らずに」伝える技術などで扱いました。本稿は面接をする側の話です。
面接官ごとに、質問が違う面接
面接官に任せた面接では、次のようなことが起きがちです。
- ある候補者には志望動機を、別の候補者には前職の失敗談を聞く
- 話が弾んだ候補者ほど、面接の時間が長くなる
- 評価は「印象が良かった」「物足りない」といった言葉で記録される
こうした面接では、候補者の違いと、聞かれた質問の違いが混ざってしまいます。評価が分かれたとき、それが候補者の差なのか、面接官の差なのかを見分けられないのです。
構造化面接とは — 質問と評価の両方を決めておく
この問題への答えとして研究されてきたのが、構造化面接です。Campion 氏らは1997年、面接の構造化に関する研究を幅広く検討したレビューを発表しました。
Campion 氏らは、それまでのほぼすべてのレビューが、面接を構造化するとその測定上の性質が改善すると結論づけてきたことを確認しています。そのうえで、構造化の構成要素を15に整理しました。構成要素は、面接の内容を高めるものと、面接での評価の過程を高めるものに分かれます。
つまり構造化とは、質問をそろえることだけではありません。何を聞くかと、どう評価するかの両方を、面接の前に決めておくことです。Campion 氏らは、構成要素のいくつかを使うだけでも面接は容易に改善できると結論づけています。すべてを一度に取り入れる必要はありません。
選考方法の予測力を比べた研究
では、構造化面接は入社後の仕事ぶりをどの程度予測するのか。Schmidt 氏と Hunter 氏は1998年、85年分の人事選考の研究を要約し、19の選考方法について、仕事の成果と研修での成果を予測する力(予測妥当性)を比べました。
二人の分析では、一般的な知的能力の検査に別の方法を組み合わせたときの予測力が高く、知的能力の検査と構造化面接の組み合わせは、仕事の成果に対して .63 という高い値を示しました。この論文は長く、選考方法を比べるときの基準として引用されてきました。
ただし、この数値は後に見直されています。次の節で取り上げます。
推定は見直されたが、構造化面接は上位に残った
Sackett 氏らは2022年、従来のメタ分析の結論を体系的に検討し直しました。従来の分析は、採用された人だけを対象にしたデータの偏り(範囲の制限)を補正する際に、補正をかけすぎて予測力を過大に見積もっていたと指摘したのです。
補正の方法を改めて推定し直すと、多くの選考方法の予測力は平均で .10〜.20 低くなりました。選考方法の予測力は、これまで考えられていたより、かなり低かったことになります。
それでも、以前の要約で上位にあった方法の多くは上位に残りました。そして、構造化面接は最上位の選考方法になりました。数値そのものは下がっても、構造化面接を選考の中心に置く理由は、むしろはっきりしたといえます。
なお、予測力が下がったということは、どの方法を使っても入社後の仕事ぶりを確実に見通すことはできない、ということでもあります。面接の結果を、ほかの情報と合わせて判断する姿勢は欠かせません。
質問の型 — 過去の行動を聞く、場面を示して聞く
構造化面接の研究を20年分まとめた Levashina 氏らの2014年のレビューは、研究の論点を8つに整理しています。その一つが、場面を示して聞く質問と、過去の行動を聞く質問の比較です。
- 過去の行動を聞く質問 — 「前の職場で、期限に間に合わないと分かったとき、実際にどうしましたか」
- 場面を示して聞く質問 — 「担当案件の期限に間に合わないと分かったら、どうしますか」
どちらの型でも、全員に同じ質問をすることが前提です。図は、本稿が研究をもとに実務向けに整理した3つの決めごとで、研究の分類そのものではありません。
職種で求める力が決まっていれば、その力が表れる場面を3〜5つ選び、それぞれに質問を一つずつ用意します。「あなたの強みは何ですか」のような問いは、答えの良し悪しを比べにくいため、具体的な行動を聞く問いに置き換えるのが基本です。
たとえば営業職の採用なら、次のように力と質問を対応させます。
| 求める力 | 過去の行動を聞く質問 |
|---|---|
| 関係づくり | 最初は取引に消極的だった顧客と、関係を築いた経験を聞かせてください。最初に何をしましたか |
| 報告・相談 | 担当案件で問題が起きたとき、上司や関係者にどう伝えましたか |
| 立て直し | 目標に届きそうにないと分かった月に、残りの期間で何を変えましたか |
どの質問も、答えの中に「いつ」「誰に」「何をしたか」が出てくるように作ってあります。行動が具体的に語られるほど、評価の基準と照らし合わせやすくなります。
評価の基準を、面接の前に決める
質問をそろえても、評価が面接官の印象に任されていれば、比べにくさは残ります。Levashina 氏らのレビューでも、評価尺度の作り方は主要な論点の一つに挙げられています。
実務では、質問ごとに「良い答え」「普通の答え」「物足りない答え」の例を、面接の前に言葉で書いておくとよいでしょう。
| 評価 | 「期限に間に合わない」と分かったときの答えの例 |
|---|---|
| 良い | 分かった時点で関係者に伝え、遅れの範囲と代わりの案を示した |
| 普通 | 残業で間に合わせ、終わったあとに報告した |
| 物足りない | 期限の直前まで誰にも伝えなかった |
評価は、面接が終わるたびに、面接官が一人で付けます。面接官どうしで話し合うのは、全員が付け終わってからにします。先に話すと、声の大きい面接官の印象に評価が引きずられるためです。
評価を付けるには、面接中の記録が要ります。記録は「感じが良い」「熱意がある」といった感想ではなく、候補者が実際に言ったことをそのまま短く書くのが基本です。「納期の3日前に上司へ報告し、作業を二つに分ける案を出した」と書いてあれば、あとで基準の表と照らし合わせることができます。感想しか残っていない記録では、面接が終わった時点の印象で評価するしかなくなります。
深掘りの質問をどこまで許すか
同じ質問をそろえると、面接が機械的になるのではないか。そう心配する面接官もいます。Levashina 氏らのレビューは、深掘り・追加の質問・促し・説明の求めを独立した論点として扱っており、どこまで許すかは研究の上でも検討が続いているテーマです。
本稿では、次のような線引きを勧めます。
- 「具体的には、どなたに、いつ伝えましたか」のように、答えを具体的にする深掘りは全員に行う
- 答えが良さそうだからといって、その候補者にだけ別の話題を広げない
- 深掘りの言葉も、あらかじめ2〜3通り用意しておく
Levashina 氏らは、構造化面接について多くのことが分かっている一方で、まだ答えの出ていない問いも多いと結論づけています。ここで挙げた線引きは、研究の結論ではなく、比べやすさを保つための実務上の工夫です。
経営者が最終面接で気をつけること
ここからは研究の外の話です。最終面接は経営者が担うことが多く、構造化が最も崩れやすい場でもあると考えられます。経営者には、自分の見る目への自信があるからです。
最終面接で気をつけたい点を挙げます。
- 一次・二次面接の評価を読んでから臨む — 同じことを聞き直さず、確かめたい点に絞る
- 経営者も同じ質問を全員に聞く — 「会社の将来をどう見るか」を聞くなら、全員に聞く
- 相性の話と能力の話を分けて記録する — 「一緒に働きたい」と「仕事ができる」は別の評価として書く
- 評価が割れた候補者は、理由を言葉でそろえる — 一次面接の評価と食い違ったら、どの答えをどう受け取ったのかを面接官と突き合わせる。経営者の一言で結論を決めない
経営者の面接は、候補者にとって会社の姿勢を知る場でもあります。全員に同じ問いを誠実に投げることは、公平な会社だという印象を伝えることにもつながるでしょう。
自社の面接を構造化する手順
Campion 氏らが述べたとおり、構造化は一度にすべてを取り入れなくても始められます。本稿の整理では、次の順で進めると取り組みやすくなります。
- 職種ごとに、求める力を3〜5つ書き出す
- それぞれの力について、過去の行動を聞く質問を一つずつ作る
- 質問ごとに、良い・普通・物足りない答えの例を書く
- 面接官全員で模擬面接を行い、評価のずれを話し合う
- 半年ほど運用したら、入社後の様子と面接の評価を見比べて質問を見直す
4番目の模擬面接は、面接官研修としても使えます。同じ答えを聞いて評価が分かれれば、基準の言葉が足りていない箇所が見えてきます。
構造化した面接では、冒頭で候補者に進め方を伝えておくと、面接が事務的に感じられにくくなります。たとえば次のように話します。
「本日は、どの方にも同じ質問を同じ順番でお聞きしています。公平に比べるためです。これまでのお仕事で実際になさったことを、できるだけ具体的に教えてください。途中で、もう少し詳しくお聞きすることがあります」
進め方を先に言っておけば、候補者は質問の意図を理解したうえで答えられます。面接官がメモを取り続けても、聞いていないと受け取られにくくなるという効果もあります。最後には、候補者からの質問に答える時間を必ず残します。
まとめ
面接官ごとに質問が違う面接では、候補者の差と面接官の差を見分けられません。研究では、面接を構造化すると測定上の性質が改善するとされ、Campion 氏らは構造化の構成要素を15に整理しました。
選考方法の予測力の推定は Sackett 氏らによって下方修正されましたが、構造化面接は最上位の選考方法になりました。全員に同じ質問をし、過去の行動を聞き、評価の基準を先に決める。この三つから始めることが、公平で比べやすい面接への近道です。
参考文献・出典
- Campion, M. A., Palmer, D. K., & Campion, J. E. (1997). A review of structure in the selection interview. Personnel Psychology, 50(3), 655-702. https://doi.org/10.1111/j.1744-6570.1997.tb00709.x
- Levashina, J., Hartwell, C. J., Morgeson, F. P., & Campion, M. A. (2014). The structured employment interview: Narrative and quantitative review of the research literature. Personnel Psychology, 67(1), 241-293. https://doi.org/10.1111/peps.12052
- Schmidt, F. L., & Hunter, J. E. (1998). The validity and utility of selection methods in personnel psychology: Practical and theoretical implications of 85 years of research findings. Psychological Bulletin, 124(2), 262-274. https://doi.org/10.1037/0033-2909.124.2.262
- Sackett, P. R., Zhang, C., Berry, C. M., & Lievens, F. (2022). Revisiting meta-analytic estimates of validity in personnel selection: Addressing systematic overcorrection for restriction of range. Journal of Applied Psychology, 107(11), 2040-2068. https://doi.org/10.1037/apl0000994