仕事が一区切りついたあと、チームで集まって何が起きたかを話し合う。米陸軍は、こうした事後の振り返りを、成果を高めるために数十年にわたって使ってきました。英語では「After Action Review」、略して AAR と呼ばれます。

本記事では、振り返り(デブリーフ)の効果を統合したメタ分析と、振り返りの中身を変えた2本の研究を紹介します。先にお断りすると、研究の対象は兵士や研究参加者で、日本の職場への当てはめは本稿の推論です。

反省会が「犯人探し」になるとき

日本の職場の反省会は、トラブルや失注のあとに開かれることが多いものです。何がまずかったのか、誰の判断が遅れたのかが話題の中心になり、参加者は自分の担当部分を守ることに気を取られます。

こうした場では、本当に話し合うべきことが出てきません。原因を口にすると誰かを責めることになり、黙っているほうが安全だからです。上司の反応が部下の話しやすさを左右することは、部下が話しやすくなる上司の反応で扱いました。

もう一つの問題は、うまくいったときに振り返らないことです。成功は「よかった」で終わり、なぜうまくいったのかは言葉にされないまま、次の仕事が始まります。本稿で紹介する研究は、この取りこぼしに光を当てています。

AAR とは — 米陸軍が使ってきた事後の振り返り

Tannenbaum 氏と Cerasoli 氏は2013年のメタ分析で、デブリーフ(AAR とも呼ばれる)を、経験から学ぶために訓練や職場で使われている方法として位置づけました。米陸軍が数十年にわたって成果を高めるために使ってきたもので、近年は医療や航空などの分野にも広がっています。

二人の整理では、デブリーフは次の三つを仕組みにしたものです。

  1. 振り返り — 何が起きたかを思い出す
  2. 議論 — なぜそうなったのかを話し合う
  3. 目標設定 — 次に何をするかを決める

なお、研究によっては「After Event Review(出来事のあとの振り返り)」という言葉も使われます。軍の作戦に限らず、一つの出来事のあとに振り返る方法として広げた呼び方です。本稿では、これらをまとめて「振り返り」と書きます。

振り返りは成果を約2割高めた — 46サンプルのメタ分析

Tannenbaum 氏らは、分野を越えて散らばっていたデブリーフの研究を、公刊されていない研究も含めて集め、効果を統合しました。対象は46のサンプル、参加者は合計2,136人です。

結果は、振り返りを行った群の成果は、対照群より平均で約25%高かったというものでした。効果の大きさを示す値(d)は0.67です。著者らは結論で、きちんと行われた振り返りによって、個人とチームの成果を約20〜25%高められると述べています。

効果は、次のどの条件でも同じくらいでした。

  • チームでも個人でも
  • 模擬的な訓練でも実際の現場でも
  • 医療の分野でもそれ以外でも

一方で、どんな振り返りでも効くわけではありません。著者らは、参加者、振り返りの焦点、成果の測り方の三つがそろっているほど効果が強まることを見いだし、進行のしかたと構造も効果に影響しうると述べています。この点は後の節で取り上げます。

著者らはまた、振り返りは比較的安く、短時間でできる介入だと指摘しています。新しい研修を組むより先に、すでにある会議の終わり方を変えるだけでも始められる方法です。

失敗だけでなく成功も振り返った兵士が伸びた

Ellis 氏と Davidi 氏は2005年、ナビゲーション訓練を続けて受ける兵士を対象に、振り返りの中身を変える実験を行いました。現場の訓練をそのまま使った、準現場実験と呼ばれる方法です。

兵士は二つの群に分かれました。

  • 失敗だけを振り返る群 — 訓練の日ごとに、うまくいかなかった出来事だけを振り返る
  • 失敗と成功の両方を振り返る群 — 訓練の日ごとに、うまくいかなかった出来事とうまくいった出来事の両方を振り返る

結果は、失敗と成功の両方を振り返った群のほうが、成績が有意に伸びました。同じ時間を振り返りに使っていても、何を取り上げるかで差が出たことになります。

ただし、これは兵士の訓練での結果です。企業のチームで同じ実験が行われたわけではありません。職場への当てはめは推論にとどまりますが、「失敗したときだけ振り返る」という日本の職場の習慣を見直す手がかりにはなります。

成功の経験は、頭の中で整理されにくい

この研究には、もう一つ興味深い結果があります。

Ellis 氏らは、兵士が出来事をどのように理解しているかを、心的モデル(頭の中にある出来事の構図)として調べました。すると、振り返りの方法を変える前の段階では、どちらの群でも、失敗した出来事のほうが、成功した出来事より、要素もそのつながりも豊かに整理されていました。

失敗すると、人はなぜそうなったのかを考えます。一方で、成功したときには、なぜうまくいったのかをあまり考えません。その結果、成功の経験は「うまくいった」という印象だけが残り、次に同じことを再現するための手がかりが乏しくなります。

この差は、その後の測定で徐々に縮まっていきました。著者らは、適切な振り返りによって、失敗から学ぶほうが有利だという差が小さくなりうるかを検討しています。本稿の言葉で言えば、成功も意識して振り返れば、成功からも学べるようになるということです。

リーダー育成に振り返りを組み込んだ研究

DeRue 氏らは2012年、リーダー育成に構造化された振り返りを組み込み、その効果を調べました。173人の参加者を9か月にわたって追跡し、四つの異なる育成の経験のたびに振り返りを行った研究です。

結果は、構造化された振り返りは、リーダーシップの成長に正の効果がありました。経験をただ積むだけでなく、経験のあとに振り返る仕組みを置くことで、成長が後押しされたことになります。

ただし、効果は誰にでも同じではありませんでした。次のような人ほど、効果が大きかったのです。

  • 誠実性が高い人
  • 経験に対して開かれている人
  • 情緒が安定している人
  • これまでに豊かな育成経験を積んできた人

この結果は、振り返りを制度にするだけでは全員が同じように伸びるわけではないことを示しています。振り返りに慣れていない人ほど、進行役の支えが必要になると本稿は考えます。

振り返りの組み立て — 振り返り・議論・目標設定

ここからは、紹介した研究をもとに本稿が考えた進め方です。米陸軍の具体的な手順をそのまま示したものではありません。

振り返りで取り上げる3つのこと — うまくいった理由を言葉にして残す成功も(SUCCESS)、人ではなく出来事を材料にして話し合う失敗も(FAILURE)、次の機会に試すことを一つ決めて終える次の目標(NEXT)を示す図
図|振り返りで取り上げる3つのこと

図は、Tannenbaum 氏らが挙げた「振り返り・議論・目標設定」と、Ellis 氏らの「成功も振り返る」という結果を、本稿が3項目に整理したものです。

  • 成功も — うまくいった場面を一つ取り上げ、なぜうまくいったのかを言葉にする
  • 失敗も — うまくいかなかった場面を、誰がではなく、何が起きたかとして話し合う
  • 次の目標 — 次の機会に試すことを一つ決めて終える

たとえば、提案が採用された商談を振り返るなら、「提案がよかった」で止めずに、どの場面で相手の反応が変わったのか、事前の準備のどこが効いたのかまで言葉にします。そこまで書き出しておけば、次の商談で同じ準備を再現できます。

Tannenbaum 氏らが効果を強めると述べた「そろえること」も、組み立ての段階で決めておきます。振り返りに参加するのは誰か、どの出来事に焦点を当てるのか、何をもって良くなったと判断するのか。この三つが食い違っていると、話し合いが散らばり、次の目標も測れないものになります。

進行役が気をつけること — 評価の場にしない

Tannenbaum 氏らは、進行のしかたが効果に影響しうると述べています。ここからは、その点について本稿が考える注意点です。

一つ目は、振り返りを人事評価の場にしないことです。振り返りで話したことが評価に使われると分かれば、参加者は失敗を話さなくなります。

二つ目は、進行役が先に結論を言わないことです。上司が進行役を務めると、最初に上司の見立てを述べてしまいがちです。そうすると、他の参加者はそれに合わせた発言しかしなくなります。

三つ目は、成功の理由を具体的に聞くことです。「よかったね」で終わらせず、「何が効いたと思うか」「次も同じようにできるか」と問いかけます。Ellis 氏らの結果が示すように、成功の経験は放っておくと整理されにくいからです。

四つ目は、決めたことを記録に残すことです。次の振り返りの冒頭で、前回決めたことを試せたかどうかを確かめれば、振り返りが一回ごとに途切れず、つながっていきます。

フィードバックを日常の文化にする考え方は、世界標準の「フィードバック文化」で扱いました。本稿の振り返りは、上司から部下へのフィードバックではなく、チームが出来事から一緒に学ぶ場です。

プロジェクトの終わりと、毎週の短い振り返り

振り返りは、大きなプロジェクトの終わりにだけ行うものではありません。Ellis 氏らの実験でも、DeRue 氏らの研究でも、振り返りは出来事のたびに繰り返されていました。

本稿では、次の二つの使い分けを提案します。

  • プロジェクトの終わり — 1時間ほどを取り、成功と失敗の両方を取り上げて、次のプロジェクトで試すことを決める
  • 毎週の短い振り返り — 定例会議の最後の10分で、今週うまくいったことを一つ、うまくいかなかったことを一つ挙げる

研修で学んだことを職場で続ける仕組みは、研修を「やりっぱなし」にしない仕組みで扱いました。また、管理職一人ひとりの行動の変化を1対1で支える方法は、世界の企業は、なぜ管理職に専門のコーチをつけるのかで紹介しています。振り返りは、こうした取り組みをチームの単位で支える方法と考えられます。

まとめ

米陸軍が長く使ってきた事後の振り返りは、メタ分析で成果を平均約25%高めることが示されました。ただし、効果を強めるのは参加者・焦点・測り方をそろえることで、進行のしかたと構造も影響しうると考えられています。

兵士の訓練では、失敗だけでなく成功も振り返った群のほうが伸びました。成功の経験は放っておくと整理されにくいからです。職場で振り返りを始めるなら、評価の場にせず、成功と失敗の両方を取り上げ、次に試すことを一つ決めて終えることが出発点になります。

参考文献・出典

  • Tannenbaum, S. I., & Cerasoli, C. P. (2013). Do team and individual debriefs enhance performance? A meta-analysis. Human Factors, 55(1), 231-245. https://doi.org/10.1177/0018720812448394
  • Ellis, S., & Davidi, I. (2005). After-event reviews: Drawing lessons from successful and failed experience. Journal of Applied Psychology, 90(5), 857-871. https://doi.org/10.1037/0021-9010.90.5.857
  • DeRue, D. S., Nahrgang, J. D., Hollenbeck, J. R., & Workman, K. (2012). A quasi-experimental study of after-event reviews and leadership development. Journal of Applied Psychology, 97(5), 997-1015. https://doi.org/10.1037/a0028244