言い切る人の意見が通りやすい
新規事業の会議で、二人の担当者が見通しを述べたとします。一人は「この市場は来年必ず伸びます」と言い切り、もう一人は「伸びる可能性は高いと見ていますが、規制の動き次第です」と添えました。どちらの案に予算がつきやすいかは、多くの人が経験から知っています。
自信をもって話す人は、それだけで有能に見えやすいものです。ためらいなく答える人は、よく調べていて、結論に確信を持てるだけの根拠があるように見えます。
ところが、言い切った見通しが外れたとき、何が起きるでしょうか。心理学の研究は、自信は最初の評価を押し上げる一方で、外したときの信頼の落ち方も大きくすることを示しています。
なお、ここで紹介する研究は、株価や出来事の予測、裁判の証言の評価を題材にしたもので、経営会議そのものを調べたものではありません。経営や職場の場面に当てはめる部分は、推論として読んでください。
自信のある助言者が好まれる — 確信のヒューリスティック
Price 氏と Stone 氏は、人が自信の強い判断をする人を好むかどうかを、三つの実験で確かめました。
参加者の大学生は、架空の金融アドバイザー二人を評価しました。二人はそれぞれ、いくつかの株が値上がりする見込みを判断しています。一人は自信の程度がおおむね妥当な穏当な助言者で、もう一人は過信気味の極端な助言者でした。
結果は、三つの実験すべてで同じ傾向でした。参加者は過信気味の助言者を好む傾向を示したのです。
なぜ好まれたのか。実験では、助言者の自信が、参加者の目に映る「その人の知識の量」と、「正しく判断した回数」の見積もりに影響していました。そして、この二つの見積もりが好みにつながっていました。
両氏はこの結果を、人が「自信のある人ほど正しく判断し、よく知っている」と推し量る手がかりを使っていると説明し、確信のヒューリスティックと呼んでいます。自信の強さが、知識と正確さの代わりの目印として使われているということです。
ただし、この研究が示したのは、自信の強い助言者が好まれやすいという傾向です。過信がいつでも得をするという意味ではありません。そのことを示しているのが、次の研究です。
自信をもって外したとき、信頼は大きく落ちた
Tenney 氏らは、証人の証言がどれだけ信頼されるかを、二つの実験で調べました。
もともと、自信のある証人は自信のない証人より信頼されやすく、正確な証人は不正確な証人より信頼されやすいことが知られていました。Tenney 氏らが問うたのは、この二つが独立に働くのかどうかです。
結果は、独立ではありませんでした。証言に誤りが見つかったとき、その点に自信を持っていた証人のほうが、自信を持っていなかった証人より、全体としての信頼を大きく損なったのです。さらに、誤りが見つかったあとでは、自信の低い証人のほうが、自信の高い証人より信頼されることがあることも示されました。
前の節の研究と合わせると、構図が見えてきます。自信は最初の評価を押し上げます。しかし、言い切った点が外れると、その自信がかえって信頼を大きく削る方向に働くのです。
「当たり外れ」と「自信の合い方」は別に見られている
Tenney 氏らは、この結果を次のように解釈しています。人は証言や日常のやりとりを評価するとき、相手の言うことが当たったかどうかだけでなく、その人の自信の程度が、実際の当たり方と合っているかを推し量っている、というものです。
この「自信と実際の当たり方の合い方」を、心理学では較正(キャリブレーション)と呼びます。自信を持って言ったことがよく当たり、迷いながら言ったことがときどき外れる人は、較正がよい人です。逆に、何でも自信満々に言い、それがしばしば外れる人は、較正が悪い人です。
この見方に立つと、自信をもって外した人の信頼が大きく落ちる理由が分かります。聞き手は一つの外れから、「この人の自信は当てにならない」と推し量ります。そうなると、その人がこれから言い切ることすべてが割り引いて聞かれるようになります(職場に当てはめた部分は推論です)。
聞き手が見ているのは、自信の強さそのものより、自信の強さと結果の合い方だということです。
不確かさを示しても、助言は嫌われなかった
それなら、不確かさを正直に伝えると評価は下がるのでしょうか。Gaertig 氏と Simmons 氏は、この問いを11の研究、のべ4,806人の参加者で調べました。
参加者は、結果がまだ分からない出来事を予測する前に助言を受け取り、その助言の質を評価するか、二人の助言者のどちらを選ぶかを答えました。
まず、先行研究と同じく、自信のある助言者は「よく分からない」と言う助言者より高く評価されました。
一方で、不確かさを次のような形で示した助言者は、嫌われませんでした。
- 結果の幅で示す — 起こりうる結果の範囲を示した
- 確率で示す — 数字で見込みを示した
- 比べて示す — 「こちらのほうが起こりやすい」と比べて示した
さらに、二人の助言者から一人を選ぶ場面では、参加者は確実だと言い切る助言者より、不確かさを示した助言者のほうを選びやすかったのです。両氏は、助言者は自信をもって話すことで得をするが、偽りの確実さを伝えることでは得をしないと結論づけています。
嫌われるのは「自信のなさ」で、「不確かさ」ではない
ここで、二つのものを分けて考える必要があります。
一つは話し手自身の自信のなさです。「よく分かりません」「自信がないのですが」という言い方は、話し手が状況をつかめていない印象を与えます。Gaertig 氏と Simmons 氏の研究でも、この言い方をした助言者は低く評価されました。
もう一つは対象の不確かさです。市場の動きや競合の反応のように、誰が調べても確実には分からないことがあります。その不確かさを、幅や確率や比較の形で示すことは、話し手が状況をつかめていることの表れとして受け取られた、と考えられます。
「分からない」と言うことと、「どの程度分かっているか」を言うことは別のことです。前者は自信のなさに聞こえ、後者は状況を把握している印象につながります(後者の解釈は研究の結果からの推論です)。
たとえば、同じ不確かな案件でも、次の二つでは受け取られ方が変わると考えられます。
- 「正直、どうなるかよく分かりません」
- 「現時点では、A案のほうがうまくいく見込みが高いと見ています。外れるとすれば、競合が値下げに動いた場合です」
後者は確実だとは言っていません。それでも、どこまで分かっていて、何が起きれば見通しが変わるのかが伝わります。
経営判断の場で、確かさの程度を言い分ける
三つの研究を経営の場に当てはめると、次のような言い分けが考えられます。以下は研究から導いた推論で、経営会議で効果を確かめたものではありません。
- 確かなことは言い切る — 実績の数字や決定済みの事項まで迷いを見せると、自信のなさに聞こえる
- 不確かなことは幅で言う — 「来期の売上は前年比5〜10%増の範囲と見ています」
- 比べられることは比べて言う — 「A案のほうが、B案より成功の見込みは高いと考えます」
- 前提を添える — 何が変われば見通しが変わるかを一言で示す
ここでの要点は、すべてを控えめに言うことではありません。Gaertig 氏と Simmons 氏の結論どおり、自信をもって話すことは得になるのです。避けたいのは、確実ではないことまで確実だと言い切ることです。
「範囲を区切る」語尾の具体的な言い換え例は、語尾で信頼は決まるの記事で扱いました。本稿では、その背景にある「自信と信頼の関係」の研究を整理しています。
外したあとに信頼を戻す言い方
見通しが外れることは、経営では避けられません。研究を踏まえると、外したあとの言い方にも注意が向きます。
Tenney 氏らの解釈に従えば、外したときに聞き手が推し量るのは「この人の自信は当てになるか」です。そうだとすると、外したあとにすべきことは、自信と結果の合い方を、自分の言葉で点検して見せることだと考えられます。
- 何を、どの程度の確かさで言ったかを振り返る — 「私は売上の伸びを確実だと説明しました」
- どこを読み違えたかを示す — 「規制の影響を小さく見積もっていました」
- 次に何を幅で言うかを示す — 「今後の見通しは、規制の動きを前提条件として示します」
ここで「想定外でした」とだけ言って終えると、聞き手は自信の合い方を修正する手がかりを得られません。ただし、外したあとの言い方が信頼の回復にどう影響するかを直接確かめた研究は今回の出典にないため、この節は推論です。
部下の報告に「どのくらい確かか」を聞く
研究の知見は、自分が話すときだけでなく、人の話を聞くときにも使えます。
確信のヒューリスティックが示すように、聞き手は自信の強さを、知識や正確さの目印として使いがちです。経営者や管理職も例外ではないでしょう。言い切る部下の報告ほど正しく聞こえ、慎重な部下の報告ほど頼りなく聞こえる、ということが起こりえます(推論です)。
そこで、報告を受けるときには「それはどのくらい確かですか」「何が分かれば確かになりますか」と聞く習慣が役に立つと考えられます。部下が確かさの程度を言い分けられるようになれば、言い切る強さではなく中身で判断しやすくなります。
あわせて、幅で答えた部下を「頼りない」と評価しないことも大切です。幅で答えると評価が下がる職場では、部下は不確かなことまで言い切るようになります。その結果、上に届く報告は自信の強いものばかりになり、外れたときに初めて読み違いが分かることになりかねません(推論です)。
自分の判断の当たり方を記録してあとで検証する方法は、不確実な時代に必要な「判断の型」の記事で紹介しました。自分の自信と結果の合い方を確かめる習慣は、部下に同じ問いを投げる前提にもなります。
まとめ
心理学の研究は、自信をもって判断する人が好まれやすいこと、しかし自信をもって外すと信頼を大きく失うこと、そして不確かさを幅や確率や比較で示した助言は嫌われないことを示してきました。聞き手は、自信の強さだけでなく、自信と結果の合い方を見ていると考えられます。
研究の題材は予測と証言で、経営の場に当てはめた部分は推論です。それでも、確かなことは言い切り、不確かなことは幅で言うという使い分けは、言い切る強さと信頼を長く保つことを両立させる一つの方法になります。
参考文献・出典
- Price, P. C., & Stone, E. R. (2004). Intuitive evaluation of likelihood judgment producers: Evidence for a confidence heuristic. Journal of Behavioral Decision Making, 17(1), 39-57. https://doi.org/10.1002/bdm.460
- Tenney, E. R., MacCoun, R. J., Spellman, B. A., & Hastie, R. (2007). Calibration trumps confidence as a basis for witness credibility. Psychological Science, 18(1), 46-50. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01847.x
- Gaertig, C., & Simmons, J. P. (2018). Do people inherently dislike uncertain advice? Psychological Science, 29(4), 504-520. https://doi.org/10.1177/0956797617739369