評価面談が気まずくなる理由
低い評価を伝える面談が気まずいのは、伝える側の気の弱さだけが理由ではありません。低い評価には、それ自体が疑われやすいという性質があります。
Brett 氏と Atwater 氏は、上司・同僚・部下など複数の立場から評価を受ける360度フィードバックを対象に、評価の結果と受け止め方の関係を調べました。評価が低い人ほど、その評価を正確ではないと考え、否定的な反応を示していました。さらに、正確でないと感じ、否定的に反応した人ほど、フィードバックを役に立たないものと受け止めていました。
著者らはこの結果をもとに、「厳しいフィードバックや自己評価とのずれが前向きな変化を促す」という広く持たれている前提に疑問を投げかけています。
この研究は360度フィードバックを扱ったもので、上司が一対一で評価を伝える面談とは形式が違います。それでも、低い評価は、伝えただけでは改善のきっかけにならず、評価への不信を生みやすいという点は、面談を準備する出発点になります。
納得は、評価の高さだけでは決まらない
では、低い評価を伝える限り、本人の納得は得られないのでしょうか。
Pichler 氏は、評価する上司と評価される部下の関係を扱った研究を、メタ分析でまとめました。上司への満足、上司からの支援、上司への信頼といった関係の質は、評価への反応と強く結びついており、その結びつきは、評価の過程への参加や評価の高低よりも強いものでした。また、関係の質と反応との結びつきは、評価が高いか低いかによって変わりませんでした。
これは相関の分析なので、「良い関係を築けば低い評価も受け入れてもらえる」と因果で言い切ることはできません。それでも、評価の高低だけで本人の反応が決まるわけではないことは読み取れます。面談で何を言うかと同じくらい、評価の期間を通じてどんな関係を築いてきたかが問われているということです。
納得を左右する3つの要素
面談の場で整えられるものは何か。手がかりになるのが、組織の中の公正さを扱う研究です。
Colquitt 氏らは183の研究をメタ分析し、公正さを4つの側面に分けて検討しました。結果の配分が妥当か(分配的公正)、決め方の手続きが妥当か(手続き的公正)、敬意を持って扱われたか(対人的公正)、十分な説明があったか(情報的公正)です。4つは互いに関連しながらも、それぞれが別々に、公正だという感じ方を説明していました。
評価面談に当てはめれば、評価の結果そのものは変えられなくても、手続き・扱い・説明の側に公正さを高める余地が残っている、ということです。ただし、このメタ分析は評価面談に限ったものではありません。
本稿では、ここまでの研究を踏まえて、面談を次の3つの要素で組み立てます。どの組み立て方が最も効果的かを直接比べた研究はないため、これは研究の傾向から整理した枠組みです。
- 参加 — 評価を伝える前に、本人の見方を聞く
- 根拠 — 印象ではなく、観察した事実で話す
- 見通し — 次の期に何が変わればよいかを示す
参加 — 評価を伝える前に、本人の見方を聞く
Cawley 氏らは、評価の過程への参加と従業員の反応との関係を、27の研究(32サンプル)のメタ分析で調べました。参加と反応との相関は、測定の誤差を補正して .61 と高く、反応のなかでは評価への満足との関係が最も強いものでした。
注目したいのは、参加の中身です。意見を聞いてもらうための参加は、結果に影響を与えるための参加よりも、多くの反応と強く結びついていました。評価を変えられるかどうかより、自分の言い分を聞いてもらえたかどうかが、受け止め方と結びついていたのです。
これも相関であり、低い評価の場面に限って確かめたものではありません。そのうえで、実務では次のように使えます。
- 評価を伝える前に「この期を振り返って、ご自身ではどう見ていますか」と聞く
- 本人が挙げた成果や事情を、評価を伝える前にいったん言葉にして返す
- 聞いた内容が評価に反映できない場合も、「伺ったことは記録に残します」と扱いを明示する
評価を伝えた後に意見を求めると、本人の発言は反論になりがちです。先に聞けば、同じ内容が振り返りとして話されます。
本人の自己評価が、伝える評価より大きく高いこともあります。そのときも、聞いている途中で訂正しないことです。「ご自身では、目標を達成できたと見ているのですね」と受け止めたうえで、「私の見方は少し違います。その違いを、これから具体的に説明します」とつなげば、ずれそのものを面談の議題にできます。
30分の面談なら、流れは次のようになります。
- 期初に共有した基準を確認する
- 本人の振り返りを聞く
- 評価とその根拠を伝える
- 次の期の見通しを一緒に決める
根拠 — 印象ではなく、観察した事実で話す
最初に見たように、低い評価は「正確ではない」と受け止められやすいものです。そう思われたまま話を進めても、その後の見通しは届きません。
根拠を示すときは、評価項目ごとに、その評価に至った事実を1〜2個挙げます。
- 「主体性が足りない」ではなく、「担当した3件の提案で、初稿が締め切りを過ぎてから出てきた」
- 「報告が遅い」ではなく、「顧客からの問い合わせへの回答に、平均して3営業日かかっていた」
Colquitt 氏らが区別した「十分な説明があったか」という側面は、この部分にあたります。人格ではなく行動を扱うという考え方は世界標準の「フィードバック文化」で扱っているので、ここでは評価面談に固有の点を一つ加えます。
それは、事実を挙げる前に、評価の基準を確認しておくことです。期初に何を期待していたのかが共有されていなければ、どれほど正確に事実を挙げても「そんな基準は聞いていない」という反応を招きます。基準の確認は、手続きの妥当さを示すことでもあります。
事実は、面談の前日に思い出して集めるものではありません。期末に近い出来事ばかりが記憶に残り、期の前半の働きが抜け落ちるからです。気づいたことを日付とともに短く記録しておけば、面談で挙げる事実に偏りが出にくくなります。
見通し — 次の期に何が変わればよいかを示す
Brett 氏と Atwater 氏の研究では、フィードバックを役に立たないと受け止めた人ほど、進行役から、成長に前向きでないと見られていました。評価を伝えるだけで終わると、本人にとって面談は「過去の判定」でしかありません。
見通しには、次の3つを入れます。
- 変わる条件 — 次の期に、何ができていれば評価が変わるのかを、観察できる行動で示す
- 確認の時期 — 期末を待たず、途中で進み具合を一緒に確かめる日を決める
- 上司の関わり — 上司として何を支援するのかを具体的に言う
変える行動を多く並べすぎないことも大切です。改善点を一つに絞る考え方はフィードバックが刺さる時、刺さらない時で扱っています。評価面談では、それを次の期の評価基準と結びつけて示す点が違います。
「厳しく言う」と「はっきり言う」は違う
低い評価を伝えるとき、二つの失敗が起こりがちです。一つは、言葉を和らげすぎて評価そのものが伝わらないこと。もう一つは、評価をはっきり伝えようとして、口調や言葉まで厳しくなることです。
はっきり言うべきなのは評価の内容で、厳しくする必要があるものは何もありません。公正さの研究で言えば、評価の中身は情報的公正の問題であり、言い方は対人的公正の問題です。Colquitt 氏らの分析では両者がそれぞれ別に公正の感じ方を説明していたので、中身を正確に伝えても、言い方で損なう部分は残ると考えられます。
- はっきり言う: 「今期の評価は、期待を下回る『C』です」
- 和らげすぎ: 「まあ、悪くはないんですが、もう少しという感じで」
- 厳しくしすぎ: 「正直、期待していただけに残念です」
悪い知らせを切り出す順番そのものは、悪い知らせは、どの順番で伝えればよいのかで扱っています。
沈黙されたとき、反論されたとき
評価を伝えた後、相手が黙り込むことがあります。沈黙を埋めようと説明を重ねると、言い訳のように聞こえます。「今すぐ何か言わなくても大丈夫です」と伝え、待ちます。
反論されたときは、事実についての反論と、評価についての反論を分けます。
- 事実が違うという反論 — 「その件は確認します」と持ち帰り、確認の結果を期日を決めて伝える
- 評価が不当だという反論 — 基準と事実をもう一度示し、なぜその評価になったのかを説明する。その場で評価を変える約束はしない
反対意見そのものの受け止め方は反対意見を受け止める話し方で扱っています。評価面談で特に大切なのは、反論を聞くことが「意見を聞いてもらえた」という参加の機会にもなる、という点です。
面談の後に効く一手
Pichler 氏のメタ分析が示したように、評価への反応は、上司と部下の関係の質と強く結びついていました。関係の質は面談の一回で決まるものではありません。
面談の後にできることは、次の二つです。
- 1〜2週間後に短い時間を取り、面談で決めた次の行動について、本人の考えを聞く
- 期の途中で決めた確認の日を、上司の側から忘れずに設定する
面談を一回の判定で終わらせず、次の期の対話の始まりとして扱います。日常の対話の持ち方は世界標準の1on1は何を話しているのかが参考になります。
やってはいけない伝え方
- 他の社員と比べて評価を説明する — 本人は自分の働きではなく、他人との比較で判定されたと受け取ります
- 「会社の方針なので」と、評価の理由を自分から切り離す — 評価したのが誰なのかが曖昧になり、説明が成り立ちません
- 期初に示していない基準を、面談で初めて持ち出す — 事実がどれほど正確でも、決め方そのものが疑われます
- 本人の話を聞かないまま、評価の結果だけを伝えて終える — 言い分を聞いてもらう機会が失われます
いずれも、手続き・扱い・説明のどれかを損なう伝え方です。
まとめ
低い評価は、伝えただけでは改善につながらず、評価への不信を生みやすいものです。ただし、本人の反応は評価の高さだけで決まるわけではありません。
面談は、参加・根拠・見通しの3つで組み立てます。評価の結果を変えられない場面でも、手続き・扱い・説明の側で公正さを高める余地は残っています。
参考文献・出典
- Brett, J. F., & Atwater, L. E. (2001). 360° feedback: Accuracy, reactions, and perceptions of usefulness. Journal of Applied Psychology, 86(5), 930-942. https://doi.org/10.1037/0021-9010.86.5.930
- Cawley, B. D., Keeping, L. M., & Levy, P. E. (1998). Participation in the performance appraisal process and employee reactions: A meta-analytic review of field investigations. Journal of Applied Psychology, 83(4), 615-633. https://doi.org/10.1037/0021-9010.83.4.615
- Colquitt, J. A., Conlon, D. E., Wesson, M. J., Porter, C. O. L. H., & Ng, K. Y. (2001). Justice at the millennium: A meta-analytic review of 25 years of organizational justice research. Journal of Applied Psychology, 86(3), 425-445. https://doi.org/10.1037/0021-9010.86.3.425
- Pichler, S. (2012). The social context of performance appraisal and appraisal reactions: A meta-analysis. Human Resource Management, 51(5), 709-732. https://doi.org/10.1002/hrm.21499